電子書籍業界の裏話 その4 なぜタイトル数が増えないのか

元書店員が告白する電子書籍業界の裏話シリーズ、前回の続きです。

電子書籍の一番の不満点はタイトル数の少なさではないでしょうか。
少なくとも自分はそうです。
「テレビで放送されているアニメやドラマの原作くらいは全巻揃えてくれよ」といつも思います。
なぜ一向にタイトル数、冊数が増えないのでしょう?

それはひとえにデジタル化は手間がかかるからなのです。
手間がかかるということは、コストがかかるということです。

例えば出版社が制作会社に、すでに紙で発売されているマンガをデジタル化して欲しいとお願いするとします。
その時マンガの原稿を渡すわけではありません。
紙で印刷されたものを渡します。

なぜならその方が綺麗だからスキャンしやすいのです。
生原稿って作家さんのメモ書きが残っていたり、紙を切り貼りしていたりするから綺麗にするのに手間がかかります。

「今時のマンガ家さんはみんなパソコンで描いているんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、手書きのマンガ家さんはまだたくさんおられます。
というか手書きのほうが多いのではないでしょうか。

単行本を裁断しスキャンするだけなら簡単かもしれません。
でも実際にはスキャンするとゴミが残ってしまうので、1ページずつ人の手で綺麗にしていかねばなりません。

iPadなどのタブレットは画面が大きいだけではなくて、解像度が高いものだからけっこう巨大な画像が必要になります。
そうすると単行本1冊のファイル容量は2GBとか4GBはザラです。
それが10冊あると20GB〜40GB、100冊あれば200GB〜400GBになりますよね。

重すぎてクラウドが使えないことが多いです。
アップロードやダウンロード時にエラーが頻発するんですよ。

なのでデータのやり取りはハードディスクを宅配便で送り合ったりしています。
ハードディスクにコピーするだけでも時間がかかって大変なのです。

で、今度はその納品データを書店に渡すとします。
書店では時間をかけていったんハードディスクからパソコンにコピーします。
そして大きさや形式を整えて、別途無料サンプルも作りオーサリングします。
オーサリングとは、要はZIPに圧縮してDRMを仕込むことです。

出来上がったZIPファイルをサーバーにアップします。
これも大量だとそれなりに時間がかかります。

文字モノの場合はXMDFでデータを作ります。
タグはHTMLに似ているので、原稿がデジタルである場合はWEBサイトを作るようなものだと思えばよいかと。

原稿がデジタルではない場合は本を裁断してスキャンします。
それをOCRでデジタルにするのですが、日本語OCRはなかなか進歩してくれません。
カタカナの「ニ」と漢数字の「二」なんて区別してくれませんから、結局は人が目で見て修正していきます。

そして文字ものの最難関、ルビという問題があります。
新書なんてまだいいのですよ。
問題は専門書や小説です。
ルビが多いのです・・・(涙。
一個一個確認しながらルビにするためのタグを入れていかねばらならないのです。

10巻とかあると軽く死ねます。

それだけではありません。
書誌情報といって、ファイルごとに作品名、著者名、出版社名、価格、商品コード、ふりがな、解説、カテゴリ等、必要なデータを作ってDBに入れます。

以上のような作業を間違えることなく数百、数千、数万冊とやっていかねばならないのです。
それはそれは気が遠くなるような作業なのであります。
時間がかかって当然なのです。

アマゾンは取次ぎ業者を介さないのだから、一から全部やったのでしょうね、ご苦労様です。
文字モノはXMDFでデータがあれば楽だったとは思いますが、マンガはね・・・wフッ

出版社からマンガの生データをもらうと心臓に悪いです。
スキャンしただけで斜めになっていたりとか、大きさがページによってバラバラとか、1ページごとPSDファイルだったりとか。。。

そういう作品は「残念ながらうちでは配信できません」と言って返却します。
たったそれだけの理由で配信してもらえない作家さんがいるなんて、気の毒だな〜といつも思っていました。

1冊デジタル化するためのコストは、全部ひっくるめて1万円くらいでしょうか。
でも配信するすべての作品が1万円の利益を生むわけではないですから、デジタル化は痛手のほうが大きいのが現状です。

以上がデジタル化がなかなか進まない一番の理由です。
そこで取次ぎ業者の出番ですよってことで、次はなぜ取次ぎ業者が存在するのかを解説してみようと思います。

「取次ぎ業者なんかあるから電子書籍の値段が安くならないんじゃないの?」とか「取次ぎ業者なんていらない」と思われるでしょうが、実は取次ぎ業者がないとこの業界は成り立たないのです。

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